夜の入り江。岩壁のそばの水を見つめていると、青い点が弧を描いた。光の間には、ほとんど見えない透明な傘がある。一度すぼまり、また開く。その小さな動きよりも速く、潮が体を横へ運んでいく。

APPEARANCE

からだの秘密

星灯クラゲの傘の縁を下から見た接写。青緑の光点から細い触手が伸び、右に幅広い口腕のひだが見える図版を拡大 +
傘の下には、糸のような触手と、ひだのある口腕。
  • 青緑の小さな点は、傘の縁に並ぶ。
  • 細く伸びる触手は、流れになびく。
  • 幅広いひだは口腕。触手とは形が異なる。

特徴 I

餌を受け取る口腕と、細い触手

細い触手は、流れてくる餌に出会うための網。

傘の下にはひだのある四本の口腕があり、その外側に細い触手が伸びる。触手で捕らえた微小な餌を、口のある体の中心へ運ぶ。流れが弱いと触手がほどけ、向きが変わると同じ側へゆっくりたなびく。流れは移動手段であると同時に、餌を触手へ運ぶ役割も持っている。

特徴 II

光が並ぶのは、傘の縁

暗い水中で先に見つかるのは、小さな光の点。

半球形の傘の縁に、小さな発光部が間隔を置いて並ぶ。水の揺れを受けたときに淡い青緑の点が短く明るくなる。体全体が照明のように輝くわけではなく、明るい水中では発光を見分けにくい。光の点だけが見えるときも、その間には透明な傘が広がっている。

特徴 III

泳ぐ力と、流される暮らし

ひと押しの泳ぎより、潮の流れのほうが強い。

透明な傘を収縮させて水を押し、ゆっくり向きを変える。強い流れに逆らって移動する力は持たない。海水の浮力に支えられ、傘の収縮と潮の向きが重なって、進む方向が決まる。水から出れば柔らかい体の形を保てず、乾燥にも耐えられない。

LOOK & COMPARE

「光が見える」と「活動している」は別。

水中の明るさと、見つけられる体の部分
水中の条件見えるもの見落としやすいこと
明るい昼の水中透明な傘と揺れる触手光が目立たなくても、漂いながら餌を取っている。
暗い入り江傘の縁の青緑の点見える光の外にも、透明な体が広がっている。
光を当てた水中傘の形や口腕のひだ青緑の光点の間にも、透明な体が広がる。
観察の問い同じ方向に進む数個体は、仲間についていく群れ?答えをひらく

同じ潮に運ばれた結果として並ぶことがある。体の向きだけでなく、触手のなびき方と周囲の水の動きを一緒に見たい。

LIFE & HABITAT

潮の通り道が、食卓になる。

夜の沿岸

入り江に集まる理由は、仲間より流れ。

外海の波が弱まり、微小な餌が運ばれる岩場の入り江。数個体が並んでいても、同じ緩やかな流れに乗っただけかもしれない。

BEHAVIOR / 食べ方と動き

傘と触手は、同じ動きをしない。

岩壁のそばを漂う星灯クラゲ。左側の透明な傘から細い触手が右へ長くたなびき、傘の下には幅広い口腕が垂れている 図版を拡大 +
傘の下の口腕と、右へ流れる細い触手。輪郭を分けて見ると、水の向きが読みやすくなる。
  1. 傘は水を押す

    すぼめたり開いたりして、体の向きを変える。それでも強い潮を押し返すほどの力はない。

  2. 触手は流れに沿う

    細い糸は同じ側へたなびく。潮が変わったときは、傘より遅れて向きが変わる様子を追う。

  3. 口腕は別の形

    傘の下に垂れる幅広いひだが口腕。細い触手で捕らえた餌を、体の中心へ運ぶ部分だ。

一日の過ごし方時間帯ごとの活動の目安
朝漂う・採餌
昼漂う・採餌
夕漂う・採餌
夜漂う・採餌

昼夜とも漂う。暗い時間ほど、傘の縁の光点が見分けやすくなる。

すみかと食べ方を、もう少し詳しく

外海の波が直接入りにくい、岩場の入り江をすみかとする。水深5〜20mほどの水中を漂い、潮が運ぶ小型の動物プランクトンを食べる。数個体が近くに集まっていても、仲間を追って群れを作っているとは限らない。同じ緩やかな流れに運ばれた結果として集まることもある。昼も水中で活動するが、発光の観察には暗い時間が向いている。

TWO PORTRAITS / 姿を見比べる

海を漂う前には、岩に付いて暮らす。

岩陰をのぞくと、細い触手を広げる小さなポリプが見つかる。漂う傘とはずいぶん違う、星灯クラゲのもう一つの姿。

岩陰のポリプ
水中の岩の張り出しの下に付着した星灯クラゲのポリプ。淡い筒状の体の先から細い触手が広がる接写 図版を拡大 +
岩に付いた体から触手を広げる。小さな姿を接写で見る。
水中を漂うクラゲ
岩場の水中を漂う星灯クラゲ。透明な傘の縁に青緑の光点が並び、口腕と触手が下へ伸びる 図版を拡大 +
遊泳個体は傘を収縮させ、潮とともに移動する。
体を支えるもの
ポリプは岩に付着し、遊泳個体は海水の浮力に支えられる。
餌との出会い
岩陰でも水中でも、流れが運ぶ小さな餌を触手で捕らえる。

岩に付く暮らしから、海を漂う暮らしへ。

  1. 岩陰のポリプ

    岩の張り出しの下に付着して暮らす。

  2. 小さな遊泳個体

    岩を離れ、水中で餌を取り始める。

  3. 傘が育つ

    傘が広がり、まばらだった光点が輪郭をつくる。

  4. 漂う成体

    向きを変えながら、潮とともに移動する。

成長の記録を詳しく読む

岩陰に付着して暮らす小さなポリプの時期と、水中を漂うクラゲの時期がある。岩の張り出しの下で育ったポリプから小さな遊泳個体が離れ、餌を取りながら傘を広げていく。幼い個体は傘の縁の光点がまばらで、成長につれて間隔のそろった輪郭が見えるようになる。

CONNECTIONS

小さな餌をめぐる、入り江の隣人。

星灯クラゲ
捕らえる餌
動物プランクトン潮が運ぶ小さな餌を触手で捕らえる。
餌が重なる相手
入り江の小魚同じ流れに運ばれる微小な動物を食べる。
幼い時期の足場
岩陰の硬い面ポリプの時期には岩に付着して過ごす。

同じ入り江の小魚とは、動物プランクトンを餌として利用する点で競合する。岩陰はポリプの定着場所であると同時に、小さな甲殻類のすみかでもある。小魚とクラゲが同じ場所にいるときは、そこへ餌が運ばれている可能性もある。光る姿だけでなく、周囲の動きにも目を向けたい。

OBSERVATION JOURNAL

観察ノート

夜の沿岸 / フィールドノート

岩壁から少し離れた水中に一個体。傘の縁に淡い青緑の点が見える。潮が向きを変えると、触手が遅れて右へ流れた。傘は数回収縮したが、個体は岩へ近づかず、そのまま暗い水へ運ばれていった。

観察の手引き

  1. 傘の収縮と、触手がなびく方向を一緒に記録する。
  2. 発光だけの姿と、補助光で体が見える姿を分けて観察する。
  3. 水から取り出したり触ったりせず、流れの中の動きを見る。

QUESTIONS

気になること、もう少し。

潮に逆らって泳げますか?

強い潮には逆らえません。傘を収縮させて向きを変えますが、長い距離の移動は潮流に運ばれます。

名前の「星灯」は何を表していますか?

傘の縁の淡い青緑の発光点が、暗い海で小さな星のように見えることに由来します。

昼間はどこにいますか?

昼も入り江の水中を漂い、餌を取っています。周囲が明るいと光点が目立たず、透明な傘のほうが見つける手がかりになります。

編纂:空想生物図鑑 編集部

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